サラリーマンADHDのための読書案内

発達障害、特にADHD周りの本のレビューです。未完の記事でも挙げてしまえ!をモットーに更新していきます。

高次機能障害のおかげで発達障害の妻と分かり合えた、泣ける話

「されど愛しきお妻様」

ミスお役立ち度 ★★
空気読役立ち度 ★
仕事お役立ち度 ★★★
知識が深まる度 ★★★
本として面白度 ★★★★★

※評価はその時の気分で左右される主観的なアレです。


タイトルの「お妻様」は重度の発達障害のようである。
ようである、というのは誰かに生活を支援してもらわないと立ち行かないレベルにも関わらず未診断だから。

支えている著者が脳梗塞になった事から「お妻様」との関係が大きくかわっていく。本書は変わりゆく夫婦の様を綴ったものである。

脳梗塞の後遺症で視覚すらコントロールが効かなくなり、記憶もうまくまとめられない…彼は「お妻様」にこれまで何度も何度も注意しても「直して」もらえなかった数々のことが脳の問題→すなわち彼女の発達障害起因であるのではないかと気づき、彼女へのアプローチを一からやり直していく。新しいアプローチによって彼女を劇的に変わっていくのだが、脳梗塞まで患わないと当事者の気持ちを実感できないのかと思うと分かり合う事の難しさを感じて辛くなったところだ。「わかってほしいからちょっと脳梗塞になってよ!」なんて言えませんしね。

本書は発達障害なんだから仕方ないじゃんで話を美しく終わらせない。「加害者」としての側面も指摘している。経済的な依存、生活的な依存、対人トラブル…それらが起こることを認識した上で何ができるのかを考えねばならない。著者はお妻様が社会福祉のお世話になるという選択肢を持っていないように見受けられた。他人からみるとお世話になるのもそれも1つの判断だとは思う。なにしろ実害があるのだから…って思うんだけどなあ。

最後にもうひとつ。著者は昨今の「発達障害者のスキルはすごいんだぞ」的なアプローチを苦々しく思っている。なぜならば、天才級の発達障害者が華々しく活躍する一方で大半の発達障害者は社会のルールに適応できず精神的にも経済的にも世の中の端に追いやられている場合が多いと感じているからだという。
私的には「スキルすごいんだ」アピールはそれはそれで発達障害の一面を示しているし、なにか1つでも得意なことがあれば輝けるんだよというルートを示すためにも必要な事だと思っている。(読んで勇気付けられるしね)。かといって「お妻様」のように苦しんでいる人が大多数だというのは事実だし、それは見逃して良いはずがないし見逃して欲しくない。


「お妻様」はどのように変わっていったのか、そして変わらないか、ぜひ読んでほしい本だ。

学べること

「わかる」ことの難しさ、無意識のうちに縛られている常識に気づく難しさ、「わからないことがわかった」後のこと、夫婦の愛

使えること

各種様々な「できない」ことに対してのアプローチ方法は真似するべき!と思いました

されど愛しきお妻様 「大人の発達障害」の妻と「脳が壊れた」僕の18年間

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